7月5日(日) 『記憶の切繪図』

 志村五郎という名前を、聞いたことがあるだろうか?

 恥ずかしながら、私はこの本を手にするまで、知らなかった。

 夫がNYに送ってほしい、と言ってきた本の中の一冊で、送る前に読んでみよう、と思い目を通したのである。

 谷山豊と取り組んだ、谷山・志村予想が、フェルマー予想の解決に貢献した、とのことである。

 フェルマー予想位は、聞いたことがあるが、内容までは知らない。

 彼は現在79歳、初期の頭脳の海外流出例と言えるのだろう。

 本の内容は、回想録とか自叙伝にあたるもので、数学の話のところを、ざっと読み飛ばすことで、私でも無理なく読む事が出来た。

 頭脳明晰の人らしく、昔の事をよく覚えていて、またその時の気持ちまで、鮮明に思い出せるのは、すごいと思った。

 10歳のときに、〝死〞について、ショッキングなことであるが、人ひとりいなくなっても、世の中は、いつもと変わりなく回る、ことを理解したそうである。

 私など、このことに気づいたのは、20歳過ぎてからである。

 14歳から19歳の時、数学の知識の根幹となる部分が形作られたそうである。

私はと言えば、クラブ活動(バスケットボール)と勉強を両立させて、得意げになっていたか、大学に入って、共学になって、デートと授業に勤しんでいたか、そんなもんである。

 日本の頭脳と、凡人以下の私を比べても、意味のないことであるが、〝出来が違う〞という言葉がぴったりだ。

 1930年生まれという事で、コチコチ頭の老人かと思えば、多少のユーモアは持ち合わせている。

 彼曰く、女性向けのパジャマは、小さい花を散らした柄が多いが、それを、〝ねまき趣味〞と名付けて、フランスの食器もまた、その〝ねまき趣味〞だそうである。

 今日は途中から、少し心を乱す出来事が起こって、うまく文字が綴れない。

 努力しても報われない事はたくさんあるが、努力しなければ報われない。

 〝頑張ればいい〞と言われても、何の才能もない普通の主婦が、いったい、どこまで頑張れるのか?

 志村五郎は言っている。

 「何か正解をしても認めたがらず、難癖をつけようとする人が多い。仮に80%くらいでも大いに褒めた方がよい。思いっきり褒めることが出来ないようでは駄目だ」

 学生時代はよく褒められたが、最後に褒められたのはいつのことだったか、思い出そうとしても思い出せない・・・