9月7日(月) ニューヨーク日記 その6(8月30日)

 いよいよニューヨーク滞在最終日、翌日は帰国である。

 この日は、朝からとびきりの快晴で、絶好のサイクリング日和となった。

 自宅近くの自転車屋さんで、自転車を3台借りて、ブルックリンまでサイクリングした。夫は既に、この自転車屋さんで自転車を購入してあった。

 自転車にまたがり、早速、西に向かってこぎ始めた。ミートパッキング・ディストリクト方面である。

 ハドソン・リバーに突き当たって、そこから南下した。途中、Pier(埠頭)が公園になっている所で、自転車を降りて景色を眺めた。

 ちょうどこの夏、セスナ機とヘリコプターの衝突事故が起こった辺りだそうだ。遠くに自由の女神も見えていた。

 再び自転車に乗って南下する。しばらく走ると、ヨットハーバーがあった。マンハッタンにヨットを係留できる人って、いったいどんな人だろう。

 ちょうど、友人を招いて、船上パーティを開いているヨットもあった。

 ワールド・トレード・センター跡地付近で市街地に入り、ブルックリン・ブリッジを渡った。
ゴールデンウィークに来た時は、橋を右手に見る公園に行ったが、今回は、橋を左手に見る公園に行った。

 そこで、三点倒立をして、互いに写メを撮っている若者がいた。話を聞くと、一人は吉本興業の芸人さんで、フォービーズ?のメンバーだそうだ。

 ニューヨークでパフォーマンスのコンテストがあって来ているとのこと。12月に「笹塚で公演があるからぜひ来てください」と誘われた。

 ブルックリン・ブリッジの公園は、私のお気に入りの場所で、本当はアイスクリームでも食べながら、本でも読んでいたいのだが、自転車を3時間の約束で借りていたので、しばらくいて帰途についた。

 帰りは寄り道せずに帰ったので、思いのほか早く着いた。まだ借りてから2時間30分しか経っていなかったので、値下げ交渉を試みた。

私は、3時間ではなく、2.5時間で計算してくれれば御の字と思っていたのに、イケ面の店員さんが「Sure」と言って、Timeの欄に「2」と記入してくれた。約3,000円得をしたことになる。言ってみるものである。

 いったん自宅に戻り、シャワーを浴びて、夫と二人で5番街に向かう。5番街と言うと、セントラルパーク付近の高級ブティック街を思い浮かべるかもしれない。

 しかし、5番街と言うのはあくまでも南北に走るAVENUEの名前なので、7丁目にあるワシントンスクエアから北に延びる道の事を指す。

 南の方の5番街で、洋服を見ていたら、店員さんに「I like your cute dress」と、またしても褒められた。

 結局そのお店では買い物はしなかったが、アメリカ人は人をいい気持にするのが上手である。

 23丁目のフラットアイアン・ビルまで歩いて、F線で42丁目まで行き、ブライアント・パークと市立図書館に行く。

 図書館は日曜日が休館日のようで、中には入れなかった。

 5番街をさらに北に歩き、セントラルパークの少し手前にある、ティファニーの本店に向かった。今年の10月に結婚20周年を迎えるので、記念に何か買ってもらおう、という訳である。

 結局指輪を買ってもらったのだが、ここでもお店の人にいい気分にしてもらった。

 指輪を決める時に、夫がお店の人に、どれがお勧めですか、と尋ねたところ、その答えが、「ゴージャスなあなたには、迷わずこちらをお勧めします」というものだった。

 私は勿論、夫にしたって、妻がゴージャスと言われれば、悪い気はしないはずだ。

 おまけに、記念日のお買い物をしたカップルには、カウンターでシャンペンまで振る舞われる。

 ティファニーの本店でシャンペンを頂くなんて、「ティファニーで朝食を」のオードリー・ヘップバーンも、さぞかし羨ましがることだろう。

 シャンペンを頂いているうちに、待ち合わせしていた長男がやって来て、今回の旅行の最後の行事である、メトロポリタン・オペラハウス前でのオペラ鑑賞に向かった。

 オペラハウスの壁面に、巨大なスクリーンが掛けられ、録画したオペラが無料で観られるのだ。この日は「ロミオとジュリエット」であった。

 先着2,800名という事で、8時開演なのに、6時過ぎには、いい席から順に埋まっていった。私たちも途中でお弁当を買って、始まる前に席で食べた。

 日本でも、夏休みには親子歌舞伎教室とか、最近では親子オペラ教室が安価で開かれるが、老若男女を問わず、様々な文化的プログラムが、無料で提供されているアメリカという国を肌で感じて、スケールの違いを感じた。

 軍事力、金融、政治、いずれをとってもリーダーシップをとっているアメリカだが、文化、遊びの分野でも、リーダーシップをとらないと、気が済まないらしい。

 いずれにしても、ニューヨーク最後の夜に、満天の星空のもと、「ロミオとジュリエット」が観られたなんて、幸せこの上ない。

 ミュージカルだけでなく、オペラもやみつきになりそうである。