9月10日(木) 『人間の覚悟』

 五木寛之さんの『人間の覚悟』を読んだのは、夏休みに入る前なので、ずいぶん経ってしまった。
この本も、夫に「暗すぎて面白いから読んでみて」と、薦められた本である。

 五木さん自身、「いよいよこの辺で覚悟するしかないな、と諦める覚悟がさだまってきた」そうである。〝諦める〞という言葉は、私たちは普通〝投げ出す〞という意味で使うが、五木さんは、「明らかに究める」、つまり〝はっきりと現実を見すえる〞という意味だと考える。

 本の中で、いろいろ、きめる必要のある覚悟が述べられているが、私が一番素敵だと感じたのは、「自分が信じることを選択したなら、それを信じていきていくしかない」という覚悟である。

 さらに、「信じる、とは裏切られても後悔しないということ・・・何かを信じたなら、裏切られることがあっても絶対に後悔もせず、責めもしない」覚悟である。

 「あなたを信じます」と言葉にすることは簡単だし、「あなたを信じている」と心で思う事も、さほど難しいことでは無い。

 しかし、五木さんが言うような意味で、人を〝信じる〞ことは、覚悟をきめたとしても、とても難しい。

 裏切られれば、信じたことを後悔するか、または、裏切られることになった、自分自身の行いを振り返り、後悔するのが、普通の人間だと思う。(後者は、五木さんの言わんとしていることではないが・・・)

 さらに、裏切られても責めないのであれば、むしろその人に対して、無関心なのではないか、とも思う。

 そうであっても、なお、五木さんが言うような意味で、〝信じる〞ことが出来たら、素敵だと思う。