5月19日(水) ニューヨーク日記10(5月8日)

 帰国の日の朝を迎えた。今にも雨が降り出しそうな空模様である。

 ニューヨークに来て、マクドナルドの朝食に飽きてから半年間、夫が毎朝通い詰めた近所のDINNERに、ニューヨーク滞在最後の朝食を食べに行った。

 「Good morning Mr.××.」と、見覚えのあるボーイさんが、声をかけてくれた。メニューを見ずとも、卵料理の調理法と、ポテトの味付け、ソーセージかベーコンか、オレンジジュースかアップルジュースかの選択をすれば、いつものモーニングが出てくる。

 時間はあったので、ゆっくりと食事をして、最後はボーイさんと一緒に記念撮影をした。「今度はいつ来るのか?」と聞かれて、「たぶん来年」と答えていたので、また来年来られるのかな?

 部屋に戻って、最後の点検をして、いよいよお別れである。今後、ニューヨークに来ることは何回かあるだろうが、この部屋を訪れることはまず無い。

 夫に「一年間お疲れさまでした」の声をかけ、部屋の鍵を閉め、1階に荷物を運んだ。夫が、大家さんの事務所に、鍵を返しに行っている間、エントランスで待った。

 程なく戻って来て、アパートの前からタクシーに乗って、EWR空港に向かった。ちょうど8時30分。空港へは30分で着いた。

 チケットを別々に購入したので、席が離れていた。チェックインの際、変えてもらおうと思ったが、満席なので無理とのこと。搭乗確認の際、もう一回トライして下さい、と言われた。

 セキュリティーチェックは、今年の1月、キス男が侵入した、例の場所だった。

 搭乗確認の担当者に、席のことを話したら、「任せておけ」と請け負った。暫くして呼び出され、同じ列の窓側と通路側になったので、あとは二人に挟まれた人に、直接交渉してくれとのことだった。

 意地悪をされない限り、交渉は成立するはず。案の定、通路側の席に替わってくれた。

 私たちが搭乗する予定の、コンチネンタル9便は、この日、2名分オーバーブッキングをしていた。搭乗を断念すれば、その日のホテル代、食事代と500ドルを差し上げます、とアナウンスがあった。

 仕事が無ければ、一番に手を挙げるのに・・・

 実を言うと、私が初めてニューヨークを訪れたのは、数十年前、私が乗る予定だったロンドンー成田便がオーバーブッキングしたため、ロンドンからニューヨーク経由、一泊して、帰国した時だった。もちろん一円も負担していない。

 滞在時間は24時間弱であったが、バッテリーパークから自由の女神を見たり、国連ビルやタイムズ・スクエアに行ったり、夜はブルー・ノートでジャズまで聴いたのだ。

 こんなお買い得なのに、なかなか手を挙げる人がいなかったようだ。もったいない話である。

 帰りは13時間のフライトの間、「ゼロの焦点」など映画を何本か観て、食事の合間に睡眠をとっているうちに、成田に着いた。

 久しぶりに家族が揃った。そしてまた、新たな生活が始まる。